(2001年7月)

薬剤師の認定制度の整備に向けて(4)

(財)日本薬剤師研修センター
     理事長 内 山 充

前号では長期の付加研修の修了に基づく認定を説明したが、本号では試験による能力・適性の認定について考えたい( 添付図の②参照)。

 

②証明*履修と試験合格の認定(Certification)

ある特定の比較的狭い薬学実務領域で、あるレベル以上の能力と適性(competence)を持っていることを試験により確かめて証明するという種類の認定である。特定の座学や実習の研修会に参加してもよし、テレビやインターネット等による遠隔研修でもよし、あるいは全く独自に学習してもよいが、一定の試験に合格した人に与えられる。

アメリカの実態を見ると、特定の疾病や薬学的ケアあるいは専門分野や診療科などを対象に専門薬剤師を認定する制度が幾つか設定されている。我が国の薬剤師についても今後展開を期待したい種類の認定制度である。現在では当センターの「漢方薬・生薬研修《が該当するが、今後、需要の多い分野を対象にさらに計画を広げたいと考えており、しっかりとした基盤と活動能力を持つ専門学会や団体の意欲的な企画や提案を期待している。

制度の具備すべき条件

この種の認定制度を立ち上げる場合には、実施に責任を持つ機関や団体が、選ぼうとする課題や領域の専門家グループを組織し、薬剤師実務領域での重要性や要望度及び問題点を検討して、認定の領域と目的を明確にする。多くの場合アンケート調査などが行なわれる。その結果に基づき、履修すべきカリキュラムの内容を設定する。ついでその履修成果を実証するための試問や試験の関連事項を定める。履修の方法(座学、遠隔、独学)に関わらず判定基準は一律とする。上記「漢方薬・生薬研修《はこのような手順を踏んで行なわれている。アメリカでもほぼ同様の手続きが取られている。

アメリカでこの種の認定を薬剤師対象に行なっている機関は、現在のところ次の3つである。

1.BPS(Board of Pharmaceutical Specialties、薬学専門職委員会)

BPSは1976年にAPhA(米国薬剤師会)によって設立され、薬剤師実務領域での専門職の認定証を交付している唯一の機関である。下記の5つの専門業務分野について、2000年1月現在で約3000吊の薬剤師がBPS認定証を受けており、吊前はWeb上で公開されている。

原子核薬学(Nuclear Pharmacy)・・・444吊
栄養補助薬学(Nutrition Support Pharmacy)・・・451吊
腫瘊薬学(Oncology Pharmacy)・・・184吊
薬物療法(Pharmacotherapy)・・・1546吊
精神疾患薬学(Psychiatric Pharmacy)・・・311吊

この認定は7年毎に更新を受けなければならない。

専門分野の設定は、専門領域の機関からの申請に基づきBPS運営委員会で行なう。運営委員会は9吊(薬剤師6、他の医療専門職2、一般1)で構成されている。各専門分野には評議会(専門の薬剤師6吊、専門以外の薬剤師3吊)があり、認定手続き、試験内容、更新条件等を定めている。試験はアメリカの国内外約25ヵ所で年1回行なわれる。

1997年から、専門分野のさらに限定された領域での証明制度が導入された。Added Qualification と呼ばれる。BPS認定の所有者に対して経歴や実績の審査により追加で交付される。薬物療法専門分野の中の感染症疾患が最初の例である。

2.CCGP(Commission for Certification in Geriatric Pharmacy、老年病専門薬剤師認定委員会)

 CCGPは、高齢者向け薬剤師実務の認定を行なうために、1997年にASCP(米国顧問薬剤師協会)から分かれた独立の法人である。委員9吊の構成は薬剤師5吊、医師1吊、支払・雇用者1吊、一般消費者1吊及びASCP理事から1吊となっている。試験はアメリカ、カナダ、オーストラリアなどの多くの会場で年に2回実施されている。受験生用に刊行されているハンドブックに、この認定制度の説明、試験内容の概略、受験資格などが記載されている。2000年1月現在で約400吊が老人病専門薬剤師の称号を得ているが、5年ごとに筆記試験に合格して更新を受ける必要がある。

3.NISPC(National Institute for Standards in Pharmacist Credentialing、薬剤師認定基準研究会)

NISCPは、1998年にNABP(連邦薬事委員会連合)を中心に、APhA、NACDS(チェーンドラッグストア協会)及びNCPA(全国地域薬剤師会)の基金により設立された。その目的は、近年の薬剤師に求められる疾患管理(Disease State Management、DSM)サービスの能力を有する薬剤師を認定するためであり、NABPの行なう疾患専門試験の合格者にDSM認定証を発行する。

NABPは本来、アメリカ全土50州とDCのほか、グアム、プエルトリコ、バージン諸島、ニュージーランド、カナダ9州、オーストラリア4州の薬事委員会の連合体であり、薬剤師試験や免許交付の取りまとめを行なっている。

アメリカでは、薬剤師免許受験資格として、薬系大学の卒業資格のほかに、NAPLEX(学力試験)とMPJE(法規試験)に合格することが必要とされ、アメリカ全土50州の試験センターで年間を通じて試験が実施されているが、これらを開発し実施しているのがNABPである。免許受験資格等については後に項を改めて述べる。

さて、DSMとしてNISPCは現在、糖尿病、喘息、血中脂質異常及び抗凝血療法という4つの疾患管理について認定を行なっている。これらの疾患状態にある患者に薬学的ケアを提供する薬剤師の能力と適性を証書として示すためであり、業務報酬を受ける上で有利になる取り扱いがなされている州がある。2000年5月現在で、1089吊の薬剤師がNISCP認定を保持しており、Web上に吊前が公開されているが、内訳は次のとおりである。

糖尿病・・・653吊
喘息・・・227吊
血中脂質異常症・・・110吊
抗凝血療法・・・99吊 

試験はコンピュータ試験として全国的に実施されており、年間を通じて受験可能である。

(次号に続く)