(2001年5月)

薬剤師の認定制度の整備に向けて(2)
 

(財)日本薬剤師研修センター
     理事長 内 山 充

  前号でアメリカにおける薬剤師の認定制度の全体像を紹介し、大まかにわが国との対比を行なったが、本号より、医療実務に従事している薬剤師に対する認定や称号についてやや詳しく紹介する。これは単にアメリカの状況を知るのが目的ではなく、わが国で今日まで続けられている薬剤師に対する諸認定制度を見直して、今後日本における薬剤師の研修と認定制度をどのように充実し整備すべきかを考察するのが目的である。
 より分かり易くするために、前号に載せたまとめの表と略号の一覧を再掲する。略号については前号に挙げた英文フルネームの代わりにそれぞれのホームページURLを記載したので活用して頂きたい。これらのホームページは当センターのホームページからのリンクにより開くことも出来る。 
 まず現在の日本で最も普及している生涯研修(表中のC)から話題とする。 

生涯研修(Continuing Education)とACPE
 アメリカの薬剤師事情に詳しい人たちが一様に持つ感想として、アメリカでは、個人レベルでの勉学意欲が非常に高く、常に厳しい競争の中で自分を磨こうとする意識が強いという。薬剤師としての適性と能力をより高めることで、職場においても、患者からも、医療従事者からも存在意義を認められようと努力を怠らないといわれる。
わが国は、日常の仕事の範囲内で努力をする人たちは多いが、それは年功序列や、年の功といわれる経験の蓄積の域を出ないのではなかろうか。生涯学習社会に求められている生涯研修は、OJT(職場でのトレーニング)ではなく、それを超えるものであり、それによって自己も職場も新しく、進んだものにならなければならない。
 アメリカでは薬剤師免許の更新を受けるために2年ごとに一定の(州により異なるが年間10〜15時間程度の)生涯研修単位を取る必要がある。一方、わが国の免許は終身制であるので更新のために研修単位を取る義務はない。しかし、薬剤師としての水準がアメリカに比して劣っても良いということも決してない。専門職能を通じて患者や他の医療従事者あるいは社会全体にとって価値ある存在になるために、生涯にわたり自分の適性や能力を維持向上させる研修に励み、その客観的証明のための認定や称号を取得することが必要であることはアメリカと何らの違いもない筈である。
 アメリカでの免許更新のための生涯研修は、ACPEの承認した実施機関(プロバイダー)の行なう研修に限られ、現在薬系大学、関連学会、職域団体、及び製薬企業など380ほどの団体がプロバイダーとして承認されている。プロバイダーのリストはACPEのホームページで見ることが出来るが、年々十数か所が増加しつつあるという。

ACPEとは
 ACPEは独立の自主団体で卒前教育と生涯教育の認証機関である。1932年に発足しているがAACP、APhA、NABPからそれぞれ3名ずつと薬系以外の教育者代表1名を加えて理事会を構成している。1932年以来、文部省の認知を受けてアメリカの全薬科大学を対象に、各州の薬剤師免許受験の資格としての卒前教育(学部卒とPharm D)課程の認可を行なっている。2001年よりアメリカでは薬剤師試験の受験資格がPharm D卒業者に限られることとなったので、現在は卒前教育課程の認可はPharm Dコースのみである。
 免許取得後の更新に必要な生涯研修のプロバイダーの承認は1975年から開始された。プロバイダーの承認も大学教育課程の認可もいずれも厳密な基準により審査されている。両者とも6年ごとに更新が行なわれるが、更新時には現場視察も含む入念な審査が行なわれている。

研修の質の確保
 ACPEが生涯研修に関して行なっている承認は、実施機関としてのプロバイダーに対してであって個々の研修計画ではない。実施機関の組織、財政および知識・技術的基盤のレベルを揃えることで研修の質を確保している。わが国における当センターの認定制度では、現在全国で約1500箇所の集合研修実施機関があるが、それらは当センターが組織としての妥当な水準を確認した上で登録したものである。個々の研修計画については、これも当センターで内容を承認して単位を発給することにより質の確保に努めている。
 わが国においても、有力な大学の卒後教育システム、学術団体の学会や研修計画、地域あるいは職域団体の計画する組織的研修など、内容背景ともに十分自立しているものが少なくない。今後の課題として、研修認定薬剤師制度の中でそれらの団体を特別の研修実施機関として認定する基準を策定し、適合する実施機関には自主的に単位の発給を認め、必要単位に達したという証明に基づいて当センターから認定薬剤師証をお送りするような方法も検討している。

生涯研修の種類
 研修の単位を、研修会への出席のほか、学術雑誌の論文学習、テレビやラジオあるいはインターネットを利用した在宅研修、その他の自己学習課程により取得できるのはわが国の現状とほぼ等しい。
 アメリカの一般生涯研修の中で、特定の比較的狭い分野について特に薬剤師実務に役立つようにと計画される課程をCertificate Program(CP)と呼んでいる。これは表中の@、Aなどの課程に比して小規模かつ短期間であり、薬系の団体や大学が自身の集会に合わせて開講することが多いという。これの内容もACPEにより承認される。たとえば、APhAは喘息、糖尿病、免疫付与、血中脂質異常症という分野でCP課程を設置している。